ボールト天井などが風格を感じさせる、エントランスホールへと続くピロティ空間

 ル・コルビュジエに師事した、日本のモダニズム建築の巨匠として知られる前川國男が、宮城県美術館の本館(仙台市青葉区)を手掛けた。地下1階、地上2階の鉄筋コンクリート造りで1981(昭和56)年に開館した。

日差しを浴び、柱の影が表情を作る中庭の回廊

 本館前には赤褐色のタイルに覆われた広場のような空間が広がっている。さらに奥に進むと、直線のピロティ空間が現れる。波打つかまぼこ形のボールト天井が美しい。

広々としたタイルの空間の先に美術館がある

 エントランスホールは開放感がある吹き抜けで、天井から自然光を取り入れる。ピロティ空間からエントランスホール、北庭へと直線の通路が建物を貫いている。このような直線の構成美が随所に見て取れる。

天井から自然光も入るエントランスホール。シンプルな直線の構成が印象的だ

 本館は、東北の美の拠点として親しまれている。建物の周りを散策すると、中庭に面したレストランのオープンテラス席や、北庭から人々の弾んだ会話が聞こえてきた。ゆったりとした時間が流れる美の空間を満喫した。美術館によると、改修工事が2023年度中に始まる予定という。

2022年12月11日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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