かつてグランドピアノも置かれていた吹き抜けの玄関。右上はハクトウワシのステンドグラス

 曲線を生かした本館の六角形の屋根は、空から見ると鳥が飛んでいる姿に見える。日常生活に影響を与えた発明家は、建物のデザインにこだわった。電機メーカー「カシオ計算機」を創業した樫尾4兄弟の次男の自宅だった樫尾俊雄発明記念館(東京都世田谷区)は、数々の発明品と共に建築美も見学できる。

館から別館への階段口には、子どもたちを思いデザインされた飛び立つタンチョウヅルのステンドグラスがある

 同館は崖が連なる地形を生かした。主屋(本館)は1972(昭和47)年に完成。一段低い土地に増築棟(別館)が86(同61)年に建てられた。本館の玄関は2層吹き抜けで、無垢(むく)の木材が美しい色合いを見せる。シャンデリアは61灯の豪華さだ。かつては玄関にグランドピアノが置かれ、道路に面した壁は厚さ60㌢のコンクリートの二重構造で、防音に配慮した。

電子式卓上計算機(電卓)の数々。懐かしい逸品を目にすることができる

 各所に設置されたステンドグラスは、異なる鳥を家族に見立てたデザインで、本館玄関上のハクトウワシは俊雄氏を表現している。館内には世界初の小型純電気式計算機のほか、発明を生かした時計や楽器も展示されている。見学予約は公式サイトで。

ユニークな曲線を描く本館の屋根。玄関上にはハクトウワシのステンドグラスが見える

2022年8月21日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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