ダイナミックな3層吹き抜け空間の市民ホール

 愛知県稲沢市の市役所本庁舎は大屋根で覆われ、その屋根を12㍍間隔に並んだ柱が支える姿は圧倒的な存在感だ。1955(昭和30)年の1町3村合併を経て、58(昭和33)年の市制施行後に旧役場機能を集約するための市庁舎として70(昭和45)年に完成した。地上4階、地下1階の鉄骨鉄筋コンクリート造りで、京都大の研究室から発足した設計事務所の設計で建てられた。

2層吹き抜けの開放的な食堂

 庁舎全体はコンクリート打ち放し仕上げで、随所に型枠の木目が美しく刻まれている。大屋根には3階の正副議長室や委員会室などがぶら下がるように配置されている。1階正面玄関から進むと、3層吹き抜けの市民ホールが広がる。天井には格子状の明かり取りがあり、陽光が惜しみなく降り注ぐ。市民ホール東側にある書庫の壁面には三角形のブロックがランダムに配され、ダイナミックな空間を演出する。

大屋根を等間隔に並ぶ柱が支える稲沢市役所本庁舎

 96(平成8)年に実施した耐震診断では現在の基準を満たしており、大規模地震に耐えうる安全性を兼ね備えたモダニズム建築だ。

大屋根が切り取られ陽光が差し込む屋上庭園

2022年8月7日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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