外観がコンクリートブロックむき出しの仕上げで合理性を追求した栗原邸(旧鶴巻邸)

 国内モダニズムの初期の先駆的作品で、国登録有形文化財の栗原邸(旧鶴巻邸)が、京都市山科区の琵琶湖疎水沿いに建っている。

 京都高等工芸学校(現・京都工芸繊維大)の校長を務めた染色家の鶴巻鶴一の自邸として、同校教授であった本野精吾(もとのせいご)が設計し、1929(昭和4)年に完成した。鶴巻の最晩年の41(昭和16)年に、後に広告代理店の萬年(まんねん)社社長となる栗原伸(のぶる)に渡った。

風通しがよく明るい2階のサンルーム

 「鎮ブロック」と呼ばれるL字形コンクリートブロックを組み合わせ、随所に鉄筋を入れてコンクリートを流し込む当時最先端の工法で建てられ、外壁がむき出しとなっているのが特徴。機能性や、ブロックが型枠を兼ねて枠を外す手間が省けて工期が短いといった合理性を追求する一方、階段手すりや照明などには幾何学的なデザインが施され装飾的でもある。新しい建築表現の模索が見られる。

本野精吾による幾何学的なデザインの階段手すり

 現在は息子の栗原眞純氏が所有しており、建物の価値を理解して継承し、活用してもらえる購入者を探している。

日本の気候風土に対処するため、窓にはひさし、建物最上部には軒が取り付けられている

2022年7月17日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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