「立坑ヤード」と呼ばれる操車場。見学用の通路が整備され、立坑の乗り場(中央奥)や、トロッコを押し出す操作台(中央の左右にある小部屋)などを間近で見ることができる

 戦後復興や高度成長期を支えた旧住友赤平炭鉱(北海道赤平市)は、操業当時の面影そのままに保存されている。

 同炭鉱は1938(昭和13)年に操業を始め、63(同38)年に総工費約20億円をかけて完成。94(平成6)年に閉山した。最盛期には4787人が働き、年間約190万トンの石炭を産出した。今も残る高さ43.8メートルの立坑(たてこう)やぐらは、深さ615メートルの地点まで1分ほどの速さで炭鉱員を運び、地下から石炭を引き上げた。

地下へと炭鉱員を、石炭を積んだトロッコを地上へと運んだ

 鉱業の歴史を伝える同炭鉱は、2016年に住石マテリアルズから赤平市に無償譲渡された。市は18年7月、立坑横にガイダンス施設を建て、全国的にも珍しい立坑ヤードが見学できる炭鉱遺産を活用した動きを広げている。

トロッコが走った線路や複雑に組まれた鉄骨が今も残る

 現在、休館日を除き1日2回のガイドツアーを実施。今年4月10日にはツアー客が1万人を突破した。ガイドを担う三上秀雄さんは、25年間、この場所で働いた元炭鉱員。三上さんは「炭鉱の歴史とともに、実体験も生かして伝えたい」と話す。

立坑やぐらのケージを動かす巻き上げドラム(中央奥)の操作室

2022年7月10日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

シェアする