VISIT

鳥取を訪ねて

COCOROTSTORE

11/9(火)〜11/21(日)の2週間、
本展のポップアップ・ストアとして出店する
倉吉の「COCOROSTORE」へ、
ひと足先に菊池さんが訪れました。
地域に根ざしたショップの魅力を探ります。

今回お話をうかがったのは

田中信宏NOBUHIRO TANAKA

倉吉白壁土蔵群の一角にある「COCOROSTORE」のオーナー。鳥取の作家を訪ね歩き、縁をつないでショップをスタート。食器、郷土玩具、家具、織物など、約35人の作家の作品を紹介している。

鳥取のよさを伝えたいその想いがすべての原点

  • 菊池

    田中さんは、どういった経緯でこちらのお店をはじめられたんですか?

  • 田中

    最初は木工の家具職人になりたくて、長野県の家具会社に勤めたんです。でも、年功序列の職人の世界を目の当たりにして心境に変化が出てきて…。大きな転機になったのは、ある展示会で傘が九角形になった伸縮式の電気スタンドをお客様にお売りしたとき。もちろん、それは素晴らしい製品なのですが、九角面取スタンドといえば、鳥取の吉田璋也がルーツ。僕の地元である倉吉でも、福田豊さんという作家さんが制作されていて思い入れも深い。そんな経験を重ねるうち、やはり鳥取の民藝や作家さんを紹介したいという思いが強くなり、お店を開くに至ったんです。

  • 菊池

    初めは作り手を目指していたんですね!そこからセレクトする側になったわけですが、どんな思いを込めてお仕事されているんでしょうか?

  • 田中

    自然素材を使った堅牢なつくり、何年使ったとしても修繕できる使い勝手のよさ、そして作り手。この土地で作られた民藝と人の魅力を丁寧に提案していきたいと思っています。取り扱っているのは、その想いに共感してくれた作家さんのもの。9割以上が鳥取県のもので、同じ倉吉にある「福光焼」の河本慶さんなど、若手作家さんの作品も置いてあります。彼は僕と同世代ということもあり、これからの活躍にすごく期待しているんです。

  • 菊池

    ということは、私もきっと同世代ですね。自分と同じ年代の方が作り手としてこれからを担う時代になっているんだということが感慨深い。私も頑張ろう!と、すごく勇気をもらえました。

新たな息吹を得てふたたび輝く地元の手仕事

    • 菊池

      こちらでは作家さんのものを単純に紹介するだけではなく、こんな風に作ってくださいと田中さんからオーダーもしてるんですか?

    • 田中

      はい。たとえば、この和綴じ本。鳥取県は1300年以上続く因州和紙の産地で、今でも手漉きで作っているところがあるんです。そのうちの一つ「かみんぐさじ」に、漉きムラがあったり、折れていたり、商品としては出せない紙があると聞いて使わせてもらいました。表紙の装丁は「NPO法人おりもんや」にお願いし、端切れを一つひとつ貼り付けています。1冊1冊すべて違うんですよ。

  • かみんぐさじ(和紙漉き)+ NPO法人おりもんや(染織)
    和綴じ本(A6サイズ/A5サイズ)
  • 菊池

    本当だ!ページをめくっていくと、いろんな紙がバラバラに入っていて面白い。

  • 田中

    一生懸命に漉かれた和紙でも、仕上がりによっては使いみちがないからとはじかれてしまう。同じようにして、郷土玩具にも活用していけるのではと思っています。

  • 菊池

    この地方に紙を作る文化があって、郷土玩具も盛んだった。そして今、不要になった和紙を活用して、新たな循環をつくっていく道が見えてきた。すごくいいアイデアですね。田中さんのプロデューサー的視点は、まさに現代の吉田璋也!

たくさんの素敵な作家さんと民藝。なかでも、私がすごく気になったのが、不思議な模様が掘られた厚みのある木の板。これは一体…?と思っていると、「スライド板を動かしてみてください」と田中さん。なんと、数字が表れてカレンダーになる仕掛けでした!田中さんの「紙がもったいない」という思いと外国で類似した意匠をヒントに生まれたオリジナルだそう。ビックリしつつ、子どもと一緒に使うのも楽しそうと妄想がふくらむのでした。

万年カレンダー
  • そもそも民藝って?
  • 鳥取を訪ねて
  • 民藝の100年の楽しみ方