双葉町の災害公営住宅。コミュニケーションを促す「軒下パティオ」も=五十嵐太郎氏撮影

【評・建築】建築による福島の復興プロジェクト止まった時間 動かす個性

文:五十嵐太郎(建築史家・東北大大学院教授)

建築

 1月に福島の主に浜通りをまわり、原発事故によって遅れていた復興の状況を確認する機会を2年ぶりに得た。津波によって破壊された宮城県や岩手県の街は、被災直後から再起への道を歩むことができる。しかし、福島は放射線量の影響によって立ち入り禁止となり、しばらく時間が止まったエリアが生じた。

 建築家による復興プロジェクトとしては、各地に新しい交流施設がつくられ、それぞれに個性をもつ。「葛尾村復興交流館あぜりあ」(2018年)は、福島のはりゅうウッドスタジオが担当し、彼らが提唱する地産地消型の「縦ログ構法」を用い、洗練されたデザインを実現している。楢葉町の、都市建築設計集団/UAPPによる「みんなの交流館 ならはCANvas」(同年)は、大きな屋根と開放的な空間をもつ。そして山本堀・URリンケージが手がけた南相馬市の「小高交流センター」(同年)は、空き地をつなぎ、道路をまたぐ分棟配置によって街に溶け込む。なお、渡部和生らの東日本大震災・原子力災害伝承館(20年)は、重要な施設となるはずだが、展示の内容に関しては踏み込み不足という印象を拭えない。

小高交流センターの石畳が敷かれた「ゆめ広場」=五十嵐太郎氏撮影

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 原発に近い双葉町は、昨年ようやく避難指示が解除となったが、駅の西側に災害公営住宅プロジェクトが進行しており、入居も始まっている。設計はコンペで選ばれたブルースタジオとパシフィックコンサルタンツが担当した。前者はリノベーションや団地再生を得意とする事務所だが、共有部をうまく使ったデザインは今回の新築でも生かされている。

 駅前に大屋根の集落が出現したような風景であり、それぞれの縁側、キッチン付きの集会所のほか、長屋のように連続する住戸の端部に安心感のある太い木のフレームによる屋外空間を8カ所設け、「軒下パティオ」と呼ぶ、コミュニケーションの場をちりばめた。また土間や路地をもつプランも特徴的である。帰還者だけでなく、新規の移住者の受け入れも想定し、新しい街の誕生を目指している。現在、第1期の25戸が完成しており、全体としては86戸になる予定だ。一方で駅の東側は壊れた建築や空き家が残り、西側とは対照的な風景が3・11で発生した原発事故の記憶を伝えている。

2023年2月15日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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