作品をバックに版木を手にする牧野宗則さん=本人提供

 浮世絵で知られる伝統版画の技法を現代版画に取り入れた木版画家、牧野宗則さん(84)=静岡市葵区=の作品展「牧野宗則 木版画の世界~織りなす色 いのちの輝き~」が18日から掛川市二の丸美術館で開催される。約100点の作品を前後期に分けて展示するほか、使用した版木を切断し組み合わせた独自の作品「ブロックス・アート」を出品するなど半世紀にわたる画業を総覧できる。7月15日まで。

 会場では浮世絵版画の彫り、摺(す)りの技法を存分に駆使しながら輪郭線を持たない作品に挑んだ初期の代表作「秋冷無風」や「月影」、パリ・ノートルダム寺院を題材にした「祈り」などが展示される。このほか縦約50㌢、横約75㌢と浮世絵の大判である大版錦絵の4倍にもなる大作「赤い風」や初期のころから描き続けてきた富士山シリーズの大作で26版41度摺りという色鮮やかな作品「霊峰讃歌」なども出展される。

 牧野さんは静岡市生まれ。版画との出合いは中学生時代。地元デパートで開催された浮世絵展で摺り師の実演に魅了され静岡高在学中から各地の工房を訪ねて修業を続け、絵、彫り、摺りの分業体制にあった全工程を一人でこなし、30代半ばで独立した。

 2003年に文化庁長官表彰を受け、浮世絵専門美術館である太田記念美術館(東京都渋谷区)で現存作家で初めて個展を開催。ニューヨーク・ニッポンクラブで個展(日本領事館後援)が開かれるなど、伝統版画の技術を駆使した作品は内外で高く評価されている。

 牧野さんは「北斎、広重の浮世絵作品はゴッホやモネなどの印象派に影響を与えた。日本が世界に誇る伝統木版画が現代において昇華していることを知ってほしい」と話している。25日と6月22日には牧野さんによる作品解説なども予定されている。

2024年5月17日 毎日新聞・静岡版 掲載

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