九条刺納樹皮色袈裟=宮内庁正倉院事務所提供
九条刺納樹皮色袈裟=宮内庁正倉院事務所提供

【展覧会】奈良国立博物館で第75回正倉院展

文:花澤茂人(毎日新聞記者)

日本美術

 第75回正倉院展が奈良国立博物館で開かれている。

 正倉院宝物は、聖武天皇の四十九日に合わせその遺愛品を東大寺の大仏に献納したのが始まり。24年ぶりの出陳となる「九条刺納樹皮色袈裟(くじょうしのうじゅひしょくのけさ)」は献納リスト「国家珍宝帳」の筆頭に書かれた特別な品だ。袈裟は僧侶の衣。ぼろ布を集めて作る伝統を意識し、黄色や緑などの絹の断片を縫い合わせている。きらびやかさはないが、仏教の力で人々を幸せにしようとした聖武天皇の姿をほうふつとさせる。

 「正倉院古文書正集 第七巻」には、今年1250年遠忌を迎えた東大寺の初代別当(住職)・良弁(ろうべん)の署名も。はるか古代の息づかいを身近に感じられる。

 11月13日まで。会期中無休。観覧には日時指定券が必要。ハローダイヤル(050・5542・8600)。

2023年10月30日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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