「ダイヤモンド・ポイント彫りレース文坏」16世紀、ベネチア、箱根ガラスの森美術館所蔵

 ◇透明感と柔らかな曲線

 ヨーロッパのガラス工芸を代表する三都市、ベネチア、プラハ、パリの歴史や技法をクロスオーバーさせながら、装飾芸術の華麗なる世界にいざないます。

 今から3600年以上前に発明されたガラスは、無色透明なものではなく、色のついたガラスが主流であった。古代エジプトやローマ帝国では色ガラス製の香油瓶やモザイク・グラス杯が制作されていた。ルネサンス期のべネチアに入り、無色透明なガラスが登場する事になる。

 15世紀のべネチアは、ローマ帝国崩壊後、イスラム地域のガラス製法を吸収し、一大ガラス産地となっていた。ムラーノ島のガラス職人、アンジェロ・バロビエール(1400~60年)は、瑪瑙(めのう)のような複雑な色ガラスや、高純度の無色透明ガラス「クリスタッロ」の発明に成功したと言われる名工だ。

 それまで、王侯貴族しか所持できなかった天然水晶のような透明感のある器を、丹念な精製と熟達したガラス製法によって実現したアンジェロの名声は、イタリア各地を超えてオリエント諸国まで及んだと言われている。このレース文坏のような透明感と柔らかな曲線を併せ持つガラスは、欧州各国の人々の羨望(せんぼう)の対象として、その後のヨーロッパ近代ガラスの発展に寄与した。

INFORMATION

特別企画展「ヴェネチア、プラハ、パリ- 三都ガラス物語」

<会期>2024年1月8日(月)まで。午前10時~午後5時半(入館は同5時まで)。会期中無休
<会場>箱根ガラスの森美術館(神奈川県箱根町仙石原 電話0460・86・3111)
    https://www.hakone-garasunomori.jp
<入館料>大人1800円、高校・大学生1300円、小・中学生600円

主催:箱根ガラスの森美術館、毎日新聞社
後援:箱根町
協力:箱根DMO(一般財団法人箱根町観光協会)、小田急グループ
特別協力:町田市立博物館、井村美術館、高砂香料工業株式会社

2023年8月13日 毎日新聞・神奈川版 掲載

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