菱田春草「黒き猫」(1910年) 重要文化財 永青文庫蔵(熊本県立美術館寄託)=展示は5月9日から

 大きく曲がった柏の木の幹に1匹の黒猫がうずくまり、じっとこちらを見つめている。輪郭のぼかしによる、柔らかな毛並みの表現が見事だ。思わず触れてみたくなるだろう。一方、柏の樹や葉は平面的に表されているが、黒猫と無理なく調和している。猫の黒と柏の葉の金色の対比も鮮やかだ。写実と装飾が見事に一致した傑作と、発表当時から高い評価を得た。

 菱田春草は36歳の若さで早世したが、4点の作品が重要文化財に指定されており、近代の美術家として最多である。伝統的な美意識と、西洋絵画の色彩表現や空間表現とをいかに融合させていくか、一作ごとに新たな表現を開拓していった結果であろう。

INFORMATION

東京国立近代美術館70周年記念展

<会期>5月14日(日)まで。会期中展示替えあり
<会場>東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園)
<問い合わせ>ハローダイヤル(050・5541・8600)。
展覧会公式サイト(https://jubun2023.jp/

2023年3月31日 毎日新聞・東京版 掲載

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