萬鉄五郎「裸体美人」(1912年) 重要文化財 東京国立近代美術館蔵

 緑鮮やかな草原の上に、下半身に赤い布をまとった裸婦が横たわっている。黒々とした鼻の穴や脇毛を誇示するかのようにさらした姿と「裸体美人」という題名のギャップに、見る者は戸惑うことだろう。事実、本作は東京美術学校の卒業制作として提出されたが、黒田清輝ら教師たちを困惑させ、19人中16番目という極めて低い成績だった。

 しかし、本作は西洋からその頃新しく紹介されたゴッホやマチスの影響を受けて、主観的表現を試みた日本で最初の記念碑的作品と位置づけられ、その後の個性の尊重された大正時代への扉を開いたとして戦後再評価が進み、2000年に重要文化財に指定されるに至った。

INFORMATION

東京国立近代美術館70周年記念展

<会期>5月14日(日)まで。会期中展示替えあり
<会場>東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園)
<問い合わせ>ハローダイヤル(050・5541・8600)
展覧会公式サイト(https://jubun2023.jp/

2023年3月25日 毎日新聞・東京版 掲載

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