和田三造「南風」(1907年)重要文化財 東京国立近代美術館蔵

【重要文化財の秘密】
東京国立近代美術館70周年記念展/3
和田三造「南風」 無名の画家、一躍注目

文:大谷省吾(東京国立近代美術館副館長)

近代美術

重要文化財

 船の上の4人の男たち。中央に立って赤い布を腰にまとい、上着を頭に掛けて遠くを見据える男は、日本人離れした筋骨隆々の体つきで目を引く。作者の和田は、伊豆大島に向かうために乗り込んだ郵便連絡船が難破し、3日間、伊豆半島沖を漂流したという自身の経験に基づきつつ、一種の浪漫主義的な構想画として作品をまとめあげた。

 当時ほぼ無名の一青年画家だった和田だが、本作は日本で最初の官設展覧会である文部省美術展覧会の第1回展で最高賞にあたる二等賞を受賞し、注目を集めた。近代日本の油彩画の歴史を語る上で欠かせない作品として、その文化史的意義が評価され2018年に重要文化財に指定された。

INFORMATION

東京国立近代美術館70周年記念展

<会期>5月14日(日)まで。会期中展示替えあり
<会場>東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園)
<問い合わせ>ハローダイヤル(050・5541・8600)
展覧会公式サイト(https://jubun2023.jp/

2023年3月24日 毎日新聞・東京版 掲載

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