初代宮川香山「褐釉蟹貼付台付鉢」(1881年)重要文化財 東京国立博物館蔵 Image:TNM Image Archives

 2匹のワタリガニが重なり合いながら、今まさに壺の上によじ登ろうとしている。実はこの蟹も含めて、すべて焼き物。蟹の形は精巧に描写され、細部の斑点まで本物そっくりに彩色されている。一方で壺は奇妙にゆがみ、あらわになった土の質感と、だらりと垂れる釉薬(うわぐすり)は荒々しさを感じさせる。

 明治の輸出工芸は「日本趣味」を過剰にまとった「欧米向け土産物」として評価の低い時代が続いたが、1990年代以降、博覧会研究が進むにつれ再評価されるようになる。とりわけ本作は、彼の技巧の到達点を示すと同時に、第2回内国勧業博覧会に出品された記録が残る点が貴重とされ、2002年に重要文化財に指定された。

<会期>5月14日(日)まで。会期中展示替えあり
<会場>東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園)
<問い合わせ>ハローダイヤル(050・5541・8600)。展覧会公式サイト(https://jubun2023.jp/

2023年3月20日 毎日新聞・東京版 掲載

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