川合玉堂「行く春」(1916年)重要文化財 東京国立近代美術館蔵=展示は5月1日まで

【重要文化財の秘密】
東京国立近代美術館70周年記念展/1
川合玉堂「行く春」 誰もが懐かしさ実感

文:大谷省吾(東京国立近代美術館副館長)

近代美術

重要文化財

 岩壁のそそり立つ山峡の渓流を、桜吹雪が舞っている。渓流には3艘(そう)の水車舟がつながれ、その一つには縄をなう男の姿を見つけることができるだろう。場所は埼玉・秩父の長瀞。玉堂は3回にわたり季節を変えてここを訪れて構想を練り、最終的に晩春の情景として描きだした。

 玉堂は、初めに京都で円山四条派の写生的な画法を身につけ、続いて東京で橋本雅邦に狩野派の筆法を学び、さらに西洋絵画の空間表現も取り入れようとした。さまざまな画派に学んだ技術を生かして、見る者が自然と画面の中に没入できるような画面づくりがなされている。誰もが一種の懐かしさを実感することができるだろう。

 東京国立近代美術館70周年記念展「重要文化財の秘密」(毎日新聞社など主催)が17日に開幕した。展示される主な作品を紹介する。

<会期>5月14日(日)まで。会期中展示替えあり
<会場>東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園)
<問い合わせ>ハローダイヤル(050・5541・8600)。展覧会公式サイト(https://jubun2023.jp/

2023年3月18日 毎日新聞・東京版 掲載

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