上村淳之「双鶴」(1997年、松伯美術館蔵)

【展覧会】心で織る花鳥画 余白の美奈良で上村松篁・淳之展

文:山田夢留(毎日新聞記者)

日本画

 奈良市の松伯美術館で、上村松篁(しょうこう)・淳之(あつし)親子の花鳥画を集めた展覧会が開かれている。同館館長でもある淳之が、昨年文化勲章を受章したことを記念しての開催。「こころの花鳥画」と題し、淳之が「象徴空間」と呼んで長年追求してきた「余白」をテーマに据える。

 展示されているのは、松篁と淳之による花鳥画35点。初期作品はなく、松篁は30代後半以降、淳之は40代以降の作品が並ぶ。本展のテーマである「象徴空間」を、それぞれが体得してからの作を集めた。花や鳥とともに画面を構成する具体性をもたない空間は、深い精神性をたたえ、静かで神秘的な世界が広がる。

 2階の展示スペースには、父子が同時期に描いた作品を並べた。「双鶴」(1997年)は淳之64歳の年、「白梅」(95年)は松篁93歳の年の作だ。「若い鷹(たか)」(90年)は晩年、珍しいシロタカを描きたいと熱望しつつ果たせなかった松篁の作。松篁のためにシロタカ探しに奔走し、後に自ら描いた淳之の「白鷹」(2001年)とあわせて鑑賞できる。一方、凜(りん)としたコサギの立ち姿が印象的な「蓮(はす)池」(00年)は、松篁が危篤に陥った際、「あの世へ旅立っていったら、多分こんな場所に居たいであろうと想像し」て、淳之が描いた。

 作品の傍らには、松篁・淳之の言葉が添えられ、素描や下絵も多数展示されている。ウズラの素描に添えられた「もう一遍やりなおさなならん」との言葉は、松篁95歳の時のもの。淳之は日本画におけるデッサンについて「対象その物を客観的に再現することよりも、画家のこころの内面を現実のかたちとして再創造することに目的が置かれている」と説く。「タイトルが『花鳥画のこころ』ではなく『こころの花鳥画』なのは、画家の心の内で作られた美しい世界を描いているからなんです」と同館の秋山美津子学芸員。2月5日まで。月曜休館(0742・41・6666)。

2023年1月25日 毎日新聞・大阪夕刊 掲載

シェアする