中辻悦子の新作インスタレーション=神戸市灘区で

【中辻悦子展】創作の軌跡130点 端材と遊ぶ果てなき冒険

文:(山田夢留・毎日新聞記者)

インスタレーション

現代美術

 鏡のこちら側に浮かぶ「まち」と「ひと」が、鏡のあちら側の「まち」と「ひと」と一つになって、空想の未来へ連れて行ってくれる。中辻悦子が長年手がけてきた「人形(ひとがた)」のインスタレーション。木片を使ったシンプルでいて個性的な造形に、自由な想像が広がっていく。

 「起・承・転・転」と題した個展が、BBプラザ美術館(神戸市灘区)で開催中だ。創作の起点となった人形「ポコ・ピン」や、「目」を表現した絵画・版画など、約130点を展示。阪神百貨店の宣伝課勤務時代に手がけたポスターや舞台美術の資料も公開され、60年を超える創作の軌跡をたどることができる。

 冒頭のインスタレーションは、地球ではないどこかに暮らす未来の人間をイメージした。一見すると二つの目らしき木片がある方が顔に見えるが、裏側にも小さな木片が一つあり、横顔にも見えてくる。「鏡の向こうとこちらは虚と実だし、人も表裏一体。裏と表がありますよね」と中辻。「形の出合いでいろんなものに変わっていくのが面白い」と、端材をそのまま生かす。

 本展の準備中、アトリエからあるメモ書きが見つかった。それは自身の人生を振り返り、優先順位を記したもの。自分、仕事、夫、育児。年代によって順位は変化しているのに、1位だけは不動の「夫」(画家の故元永定正)だった。「古い昔の考えだと思うけど、自分は残った時間でやるのが当たり前だった」

 時間や場所が制約されても、作りたいという気持ちだけは枯れなかったという中辻。手近にあるものを生かすのも、そんな制作環境から生まれた特徴の一つだ。キャンバスに端材やロープを配した最新作は「人形」からも離れ、新たな展開を見せる。「自分でもえらい難しいところに迷い込んできたな、と思います」。言葉とは裏腹に、楽しくて仕方がないというふうに笑った。22日まで。月曜休館(078・802・9286)。

2023年01月11日 毎日新聞・大阪夕刊 掲載

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