かつての大客室にポール・ポワレのドレスや1910年代の家具が並ぶ

 「アール・デコの館」として知られる東京・白金台の都庭園美術館。その特徴的な空間で1900~30年代の絵画や彫刻、家具やファッションなど「モダン」を体現した約400点が響き合っている。3月5日まで。

 東洋のファッションをデザインに取り入れたフランスの服飾デザイナー、ポール・ポワレ(1879~1944年)によるドレスは、約100年前の同国の最先端デザインと技術を結実させたこの邸宅の家主の姿を想像させる。鮮やかな黄色や青を用いたフランシス・ジュールダン(1876~1958年)の家具や食器も調度品のようになじんでいた。

がらりと雰囲気が変わる新館の展示

 機能と装飾、相いれない概念の落としどころをそれぞれに探るような作り手の営みがいきいきと伝わってくる。交通、通信手段の発達とともに人の往来が活発になりフランス、ドイツ、オーストリア、そして日本の作家らが刺激、共鳴し合う様も示す。第一次世界大戦中からウィーン工房の中心を担うようになったフェリーチェ・リックス・ウエノ(1893~1967年)ら女性の活躍にも目を配った。

 昨年7月に同館館長に就任した建築家の妹島和世(56年生まれ)は、「生活空間のスケールでデザインされたものを見せる場として、この旧邸宅はとても適している」と指摘する。新館のホワイトキューブには、独デッサウへ移転した後のバウハウスや、仏現代芸術家協会(UAM)による家具などを整然と並べた。

 同館は昨年10月、正門横の旧門衛所の活用を始めた。現在は、横浜国立大大学院生らが建築家、菊竹清訓の「スカイハウス」をめぐる研究成果を発表している。誰もが無料で立ち寄れる。同館への関心が一層高まる企画が期待される。

2023年1月4日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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