国宝「竜首水瓶」飛鳥時代・7世紀、東京国立博物館蔵<通期展示>

【特別展】
国宝・東京国立博物館のすべて/8
竜首水瓶 異国への強い憧憬

文:清水健(東京国立博物館主任研究員)

コレクション

国宝

 異国情緒があふれるこの水差しは、中国・唐代に流行したペルシャ趣味の胡瓶(こへい)(胡は西方の異民族の意)を手本にし、我が国で製作されたと考えられる。眼に輝く碧(あお)いガラスや胴に表された有翼馬に象徴されるように、シルクロードの風をまとったこの水差しは、天竺(てんじく)(インド)の向こうを知らなかった当時の日本人の、異国への強い憧憬(しょうけい)を反映して余りある。

 東西文化の融合が生んだこの奇跡のような造形は、奈良・法隆寺に伝わった。明治11(1878)年に他の多数の宝物とともに皇室に献納(けんのう)され、今日まで法隆寺献納宝物として大切に守り伝えられている。

INFORMATION

特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」

<会期>12月11日(日)まで。会期中展示替えあり。本展は事前予約制(日時指定)
<会場>東京国立博物館平成館(台東区上野公園)
<問い合わせ>050・5541・8600(ハローダイヤル)
<公式サイト>https://tohaku150th.jp/

2022年10月31日 毎日新聞・東京版 掲載

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