国宝「破墨山水図」雪舟等楊筆 雪舟自序 月翁周鏡ら六僧賛、室町時代・明応4(1495)年、東京国立博物館蔵
<11月15日~12月11日展示>

【特別展】
国宝・東京国立博物館のすべて/5
破墨山水図 雪舟の熟達した画技

文:高橋真作(東京国立博物館研究員)

コレクション

国宝

 室町時代を代表する水墨画家・雪舟が、76歳のとき、絵の修行を終えた卒業証明書として弟子に与えた作。素早い筆遣いで表した抽象的な風景に、家の屋根や酒屋の旗などを描き込むことで、湿った空気に包まれた水辺の山水景観が絶妙に表現されている。老練の域に達した雪舟の熟達した画技が見て取れるだろう。

 絵のすぐ上には、雪舟が自ら書いた序文があり、さらにその上には、京都の著名な禅僧6人の賛が並ぶ。雪舟は序文で、中国への渡航経験など自身の足跡について語っている。画家の生の声が刻印された作として、その資料的価値は極めて高い。

INFORMATION

特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」

<会期>12月11日(日)まで。会期中展示替えあり。本展は事前予約制(日時指定)
<会場>東京国立博物館平成館(台東区上野公園)
<問い合わせ>050・5541・8600(ハローダイヤル)
<公式サイト>https://tohaku150th.jp/

2022年10月23日 毎日新聞・東京版 掲載

シェアする