国宝「古今和歌集(元永本)上帖」平安時代・12世紀、東京国立博物館蔵(三井高大氏寄贈)
<通期展示(会期中ページ替えあり)>

【特別展】
国宝・東京国立博物館のすべて/4
古今和歌集(元永本)上帖 墨線巧み、流麗な仮名

文:惠美千鶴子(東京国立博物館150年史編纂(へんさん)室長)

コレクション

国宝

 上帖(じょうじょう)の奥書に「元永三年」とあるため、「元永本」と呼ばれる。原装訂(そうてい)のまま『古今和歌集』(仮名序(かなじょ)・20巻)全てを完存する現存最古の遺品。冊子本2帖の全ページに日本製の唐紙を使っている。孔雀(くじゃく)唐草文(からくさもん)などの文様15種が輝くように雲母(きら)刷りされており、裏面には染紙に金銀箔(きんぎんぱく)が散らされている。

 筆者と推定される藤原定実(さだざね)は、平安時代に能書(のうしょ)(書の巧みな人)として代々活躍した家系・世尊寺(せそんじ)家の第四代当主。料紙装飾に合わせて細い墨線を巧みに操り、よどみなく動かすことによる流麗な仮名が見事である。

INFORMATION

特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」

<会期>12月11日(日)まで。会期中展示替えあり。本展は事前予約制(日時指定)
<会場>東京国立博物館平成館(台東区上野公園)
<問い合わせ>050・5541・8600(ハローダイヤル)
<公式サイト>https://tohaku150th.jp/

2022年10月20日 毎日新聞・東京版 掲載

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