歌川国貞「遊郭の賑わい」(部分)

 東京・原宿の太田記念美術館で「はこぶ浮世絵―クルマ・船・鉄道」展が開催されている。船や馬による荷運びから、鉄道によるダイナミックな輸送まで、浮世絵から人々のにぎやかな声が聞こえてくる。

 人が「はこぶ」姿もある。歌川国貞「遊郭の賑(にぎ)わい」(1816年ごろ)は、着物をたすき掛けにした女性が料理をのせた卓を運ぶ。2万5000円ほどで仕出し屋が届けたといい、豪華な器とタイや煮物の料理が細かく描き込まれている。

 150年前に開業した鉄道だが、鉄道絵ブームは開業前から起きていた。学芸員の渡辺晃さんは「予想図もない時代に、見たこともない鉄道を想像を交えて描いていた」と話す。どこか珍妙な列車にはほおが緩む。同時に、新しいものを絵で表現したいという作り手、鉄道を絵で見たいと願う人たちの、時代の熱気を感じる。26日まで。

2022年10月19日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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