国宝「紅白芙蓉図」(白芙蓉[右]、紅芙蓉 [左])李迪筆、中国 南宋時代・慶元3(1197)年、東京国立博物館蔵<18日~11月13日展示>

【特別展】
国宝・東京国立博物館のすべて/2
紅白芙蓉図 色の変化、見事に

文:植松瑞希(東京国立博物館研究員)

コレクション

国宝

 芙蓉(ふよう)は富裕の花として親しまれてきた。この作品は、一日の間で白から紅へ色を変える酔芙蓉を描いたとされる。白芙蓉では、まだ咲きたてのみずみずしさ、紅芙蓉では、ほんのり赤味を増してきたつややかさが、見事に表されている。

 中国、南宋の宮廷画家である李迪(りてき)(12世紀ごろ)の代表作で、室町時代には日本に渡っていたと推測される。古来、日本人が花鳥の美の理想形と考えていた、南宋宮廷画風の粋を今に伝える、国宝にふさわしい優品である。

INFORMATION

特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」

<会期>12月11日(日)まで。会期中展示替えあり。本展は事前予約制(日時指定)
<会場>東京国立博物館平成館(台東区上野公園)
<問い合わせ>050・5541・8600(ハローダイヤル)
<公式サイト>https://tohaku150th.jp/

2022年10月14日 毎日新聞・東京版 掲載

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