芙蓉(ふよう)は富裕の花として親しまれてきた。この作品は、一日の間で白から紅へ色を変える酔芙蓉を描いたとされる。白芙蓉では、まだ咲きたてのみずみずしさ、紅芙蓉では、ほんのり赤味を増してきたつややかさが、見事に表されている。
中国、南宋の宮廷画家である李迪(りてき)(12世紀ごろ)の代表作で、室町時代には日本に渡っていたと推測される。古来、日本人が花鳥の美の理想形と考えていた、南宋宮廷画風の粋を今に伝える、国宝にふさわしい優品である。
INFORMATION
特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」
<会期>12月11日(日)まで。会期中展示替えあり。本展は事前予約制(日時指定)
<会場>東京国立博物館平成館(台東区上野公園)
<問い合わせ>050・5541・8600(ハローダイヤル)
<公式サイト>https://tohaku150th.jp/
2022年10月14日 毎日新聞・東京版 掲載