毎日新聞創刊150年企画となる東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」が18日、東京・上野の東京国立博物館で開幕する。同館が所蔵する国宝刀剣をまとめて展示する「国宝刀剣の間」を設ける。その鑑賞ポイントを、本展担当の佐藤寛介・同館列品管理課登録室長が解説する。=掲載作品はいずれも東京国立博物館蔵(通期展示)

◇「刀剣の間」名品一堂に

 東京国立博物館(東博)は、2022年10月現在、国宝に指定されている美術工芸品の約1割となる89件を所蔵しており、日本最大の国宝コレクションを誇ります。創立150年を記念して開催する本展では、東博史上はじめて、この国宝89件すべてを公開します。(会期中展示替えあり)

 このうち、絵画分野の21件に次いで数が多いのが、実は刀剣分野の19件で、これも日本最多です。さらに本展では、刀剣の見どころである刃文や地鉄をより美しく見せるためにケース形状や照明にこだわった展示室、名付けて「国宝刀剣の間」で、これらを一堂に展示します。

国宝「太刀 銘 三条(名物 三日月宗近)」平安時代・10~12世紀 渡邊誠一郎氏寄贈
国宝「太刀 銘 安綱(名物 童子切安綱)」平安時代・10~12世紀

 ここでは、この「国宝刀剣の間」ならではの刀剣鑑賞の見どころを紹介します。まず、国宝「太刀 銘 三条(名物 三日月宗近)」と国宝「太刀 銘 安綱(名物 童子切安綱)」を見比べてみましょう。日本刀が成立した平安時代末期・11世紀ごろの名工、宗近と安綱の代表作です。三日月宗近はもっとも美しい日本刀ともいわれ、童子切安綱は鬼を斬ったという伝説をもちます。この二つは、実は刀身の寸法がまったく同じ(刃長80.0㎝、反り2.7㎝)なのです。しかしながら、刀身のシルエットはずいぶん違います。三日月宗近は刀身が細身で手元が強く反って先が細くなり、優美な印象を与えます。一方、童子切安綱は刀身が全体的に反って、がっしりとした武骨さがあります。これは、京都を拠点とした宗近に対し、伯耆国(鳥取県西部)を拠点とした安綱という、作者の居住地の地域文化が反映されていると考えられます。

国宝「太刀 銘 吉房(岡田切)」鎌倉時代・13世紀
国宝「刀 金象嵌銘 城和泉守所持 正宗磨上 本阿(花押)」鎌倉時代・14世紀

 もう1例、見てみましょう。「太刀 銘 吉房(岡田切)」は備前国(岡山県南東部)を拠点とした福岡一文字派の吉房の代表作で、織田信雄がこの太刀で家臣を手討ちにしたと伝わります。そして、「刀 金象嵌(ぞうがん)銘 城和泉守所持正宗磨上 本阿(花押)」は、刀剣鑑定の権威である本阿弥光徳が名工として名高い正宗の作と極めた(鑑定した)ものです。どちらも力強い作風が特徴ですが、その表現はかなり異なります。吉房は華やかな刃文によって刀身が気を発しているような印象を与えるのに対し、正宗は鉄の鍛えによって地鉄や刃文の働きを強調することで内に秘めあた躍動感を生み出しています。

 こうした違いは、やはり実物をじっくり見ることで感覚的に理解できるもので、なかなか写真や言葉では伝えきれません。ぜひこの機会に、「国宝刀剣の間」で日本刀のもつ美しさ、気高さ、すごみといったものを感じ取っていただき、日本刀の魅力にどっぷり没入してください。

「国宝刀剣の間」展示室イメージ

◇図録 通販サイトでも

会場特設ショップのほか、通販サイト「まいにち書房」(https://www.mainichi.store/)でも公式図録=写真=を販売します。同館の国宝89件すべてをカラーで掲載する史上初の決定版です。A4変型判。1冊3000円(税込み・送料別)。

◇埴輪モチーフに

本展出品作の国宝「埴輪(はにわ) 挂甲(けいこう)の武人」をモチーフにしたオリジナルグッズ=写真=のほか、名刀を擬人化した人気ゲーム・刀剣乱舞ONLINEとのコラボグッズなども会場の特設ショップで販売します。

◇18日開幕

会期
10月18日(火)~12月11日(日)。月曜休館。開館時間は午前9時半~午後5時。金・土曜は午後8時まで。会期中、一部展示替えあり。


会場
東京国立博物館 平成館(東京都台東区上野公園、JR上野駅・公園口徒歩10分)


観覧料
事前予約制(日時指定)
一般2000円、大学生1200円、高校生900円。中学生以下無料。※障がい者とその介護者1人は無料(事前予約不要)
チケットおよび最新情報は展覧会公式サイト(https://tohaku150th.jp/)で。


<問い合わせ>
050・5541・8600(ハローダイヤル)


主催 東京国立博物館、毎日新聞社、NHK、NHKプロモーション、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
協賛 JR東日本、大伸社、大和ハウス工業、三井住友銀行、横河電機、横河ブリッジホールディングス

2022年10月14日 毎日新聞・東京朝刊 掲載

シェアする