国宝「孔雀明王像」平安時代・12世紀、東京国立博物館蔵<10月18日~11月13日展示>

【特別展】
国宝・東京国立博物館のすべて/1
孔雀明王像 穏やかな表情、繊細優美

文:古川攝一(東京国立博物館研究員)

コレクション

国宝

 孔雀(くじゃく)に乗った明王である。しかし不動明王のような憤怒の表情ではなく、菩薩(ぼさつ)のように穏やかだ。孔雀は毒蛇や毒虫を食べても平気なことから、仏教では人々の災いを取り除く仏として信仰された。

 肉身の輪郭線は柔らかく伸びやか、衣や孔雀の羽に施された截金(きりかね)(金箔(きんぱく)を細く切って貼り文様を表す)は繊細優美。肌は白く、立体感を表すために赤のグラデーションが淡く施され、どこを見ても平安貴族の高い美意識が感じられる。

 子供を守る訶梨帝母(かりていも)と同じく柘榴(ざくろ)を持つことから、美福門院(鳥羽天皇の皇后)の安産祈願のために制作されたとみる説が有力である。

 東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」(主催・東京国立博物館、毎日新聞社、NHK、NHKプロモーション、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁)が開幕する。展示される国宝を紹介する。=随時掲載

INFORMATION

特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」

<会期>10月18日(火)~12月11日(日)。会期中展示替えあり。本展は事前予約制(日時指定)
<会場>東京国立博物館平成館(台東区上野公園)
<問い合わせ>050・5541・8600(ハローダイヤル)
<公式サイト>https://tohaku150th.jp/

2022年10月12日 毎日新聞・東京版 掲載

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