展示室の様子。左から二つ目は磯崎新による「東京都新都庁舎計画」断面模型

 建築模型が担ってきた役割をたどる展覧会が東京・天王洲の「WHAT MUSEUM」で開かれている。16日まで。設計事務所などから模型を預かり、管理・保管する「寺田倉庫」が運営する同ミュージアムが企画した。

 古墳時代の家形はにわや江戸時代の城郭の立体配置図、茶室の起こし絵図などは、まだ「模型」という言葉がない頃の立体メディアの姿を伝えていた。また、建築に込めた哲学を体現するメディアとして磯崎新による「東京都新都庁舎計画」断面模型が紹介されていた。1991年に全プロジェクトの模型をホオの木で作り直した磯崎は、スクラップアンドビルドがくり返される日本社会で、建築の概念を伝え残すメディアとして現物より模型を重視した。

 東日本大震災で失われた沿岸の街を、地元の人々とのワークショップを通してジオラマ模型にしたのは「『失われた街』模型復元プロジェクト」。小さくも具体的な家々の模型を前に、参加者は記憶をたぐり、制作を担った大学生らと共有したという。都内の公園をかたどった大型模型には来場者が手を加え、育てられるようにした。来場者は実際に模型を操作することでイメージが喚起される体験ができる。

来場者が手を加えられるオンデザインパートナーズによる公園の模型

 歴史的文脈に位置づけられた模型約20点はいずれも、豊かな情報を宿していた。本展を担当した近藤以久恵ディレクターは「特に若い建築家の間ではデジタルツールの発達によって必ずしも模型を必要としない時代になったが、その役割や魅力について再考したかった」と語る。

 27日から11月13日までは、本展の作品の一部を入れ替え「さわれる!建築模型展」として体験型の展示をメインに再構成する予定。同ミュージアムに入館した人は、オプションで隣接する模型保管庫を見学することもできる。

2022年10月5日毎日新聞・東京夕刊 掲載

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