後藤哲也、萩原俊矢「ddd DATABASE1991-2022」ポスター(B1)

【展覧会】
ddd DATABASE 1991-2022
補完するウェブと「身体感覚」

文:小林公(兵庫県立美術館学芸員)

デザイン

 (京都dddギャラリー・9月25日まで)

 dddギャラリーは関西では希少なグラフィックデザインを専門とするギャラリーとして1991年に大阪の堂島に開設された。それから難波、京都の太秦と所在地を変えながら活動を継続してきた。四条烏丸への移転後初となる今展は節目の第1弾にふさわしく、過去の全231回の展覧会の全てを対象とする企画である。ウェブ上のデータベース(https://www.ddddb.online/)と、関西を拠点に活動する12人のデザイナーが選んだポスター85点をチラシ全点とともにギャラリーに詰め込んだ展覧会がセットとなっている。企画者が後者を「身体感覚のデータベース」とも呼ぶように、ウェブとフィジカルのそれぞれが補完的な役割を担い、総体としてのデータベースを提示することが意図されている。

 ウェブでは今展を含む232回全てのポスター画像とあわせて、展示風景や関係者名、関連イベントなどの情報が網羅されている。「曖昧さ」「聞く」など12人の選者が紡いだキーワードや、人物名などによる検索機能も備わり、91年から積み重なる活動情報に手軽にアクセスできる。検索結果は、該当しないとされたもののボリュームも視覚的に確認できる形で提供されるのが興味深い。データベースに期待される総覧性を担保しつつ、検索とは排除に他ならないことも端的に示すからである。

 こうした批評性は本展の広報印刷物のデザインにも通底する。ポスター(B1とB2サイズ)、チラシ、案内ハガキにデザインされた細いストライプ模様は、過去のポスター231枚の上端部分を原寸大で順に並べたもの。1㌢に満たない帯の幅は、それら4種類の印刷物の縦寸法を合算した長さの上に全ポスターを配置するというコンセプトから導き出された。

 ウェブでは定めることも表現することもできない物体の「大きさ」は、デザインにおいても私たちの生活においても絶対的な拘束力を持つ条件だ。このことを実感させるためにこそ、展覧会場は圧迫感を感じさせるほどの展示物に満たされている。B1サイズのポスターの大きさがいかなるものか。会場に用意されたポスターと同寸法のハンドアウトを持ち帰ろうとするとき、嫌でも実感されるだろう。しかしデータベースとは、そのように厄介な質量をもつ実資料のコレクションがあってはじめて整備可能なのであり、また有用ともなる。

INFORMATION

京都dddギャラリー

京都市下京区烏丸通四条下ル水銀屋町620

2022年8月10日 毎日新聞・大阪夕刊 掲載

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