現代美術家、小松美羽(1984年生まれ)の画業を振り返る展覧会が川崎市岡本太郎美術館で開かれている。モノクロの銅版画から極彩色のアクリル画、有田焼によるオブジェまで、エネルギーに満ちた作品が並ぶ。
長野県坂城町に生まれ、小さい頃は近くを流れる川や森で遊んだという小松。作品に多く描かれる動物らは、子どものころたびたび出合った「神獣」だという。毛一本一本を輝く虹色で描き込む一方、輪郭線は力強い。会場ではいくつもの大きな目がこちらを見据える。
立教開宗1200年を迎える真言宗総本山、東寺(京都市)に奉納する「ネクストマンダラ―大調和」は本展の見どころだ。東寺に滞在して描いた、縦横約4㍍の2幅一対の大作。国内外で触れたさまざまな宗教や神話のエッセンスをちりばめ、異質なもの同士の共存を祈った。
マンダラに挟まれるように設置されているのは、岡本太郎による立体作品「渾沌(こんとん)」だ。小松はその周りを故郷で採取したという黒曜石で囲った。縄文の美を発見、評価し、神秘や霊的なものを掘り下げた岡本と、目に見えない神聖なものを神獣に託し、マンダラも描く小松。同美術館の土方明司館長は「副題『霊性とマンダラ』は岡本と小松を結ぶキーワード。両者の作品が響き合う空間になった」と喜ぶ。
小松は本展開幕の前日、同館のシンボルでもある「母の塔」の前でライブペインティングを披露した。背丈を超えるカンバスに筆と指で、時にチューブから直接絵の具をしぼり出し、一気に描いた。完成後、「岡本太郎さんが望んでくれた機会だと思え、温かいものを感じた。少しでも多くの人の心や魂が救われるようにと願って描いた」と語った。28日まで。
2022年8月10日 毎日新聞・東京夕刊 掲載