◇驚異の描写力 89点
1859年に開館し、ヨーロッパでも屈指の規模を誇るスコットランド国立美術館の至宝を紹介する展覧会「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」が、神戸市立博物館(神戸市中央区)で16日に開幕する。ルネサンス期から19世紀後半までの西洋絵画史を代表する巨匠たちの作品のほか、イングランド絵画とスコットランド絵画の珠玉の名品も並ぶ。神戸にやってくる89点のうち多数が日本初出品だ。
スコットランド国立美術館は、古都エディンバラにある。欧州諸国の美術館に多い、王室コレクションがもとになった成り立ちではなく、スコットランドを愛する人々によって収蔵品が拡充されてきたという。
4章構成に先立つプロローグでは、そんな美術館の歴史やエディンバラの街並みを感じさせる作品を紹介する。アメリカの風景画家、チャーチの大作「アメリカ側から見たナイアガラの滝」は、スコットランド出身の実業家が美術館に寄贈したもの。画面左上には展望台から滝を眺める人物が描かれており、滝のスケール感を強調している。大画面の水しぶきの表現で、この季節にはありがたい清涼感も得られそうだ。
その後は、「美の巨匠たち」を時代順に紹介する。ルネサンスの章では、レオナルド・ダ・ヴィンチの師ヴェロッキオに帰属すると位置づけられている聖母子像や、エル・グレコの「祝福するキリスト(「世界の救い主」)」などが並ぶ。
17世紀バロック期の目玉は、スペインのベラスケスがなんと10代で描いた「卵を料理する老婆」。女性と少年の表情、衣服や食器のリアルな質感描写は驚嘆するばかり。中でも、調理中の油に浮かぶ卵の白身が固まりつつある部分に注目したい。オランダのレンブラントは文字通りの巨匠として名高い。「ベッドの中の女性」はドラマチックで目が離せなくなりそうだ。
18世紀の英国では、肖像画が人気を博した。先導した一人がレノルズ。「ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち」は、ふんわりした白の衣装で手芸にいそしむ3姉妹を優雅に描いた作品。3人の女性という構図に「三美神」という古典絵画の様式を思い出す人もいるだろう。こうした古典の品格を取り入れつつ、当時の上流社会にフィットするように流行を取り入れたのが人気を得た理由かもしれない。
また、ラファエル前派の創設メンバーとして知られ文学を題材にしたミレイ、風景画に革新をもたらしたターナー、フランス印象派のルノワールやシスレーら、19世紀の著名画家の作品も多数紹介する。西洋絵画の魅力を堪能できるだろう。
作品図版はいずれもⒸTrustees of the National Galleries of Scotland
展覧会「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち
会 期:7月16日(土)~9月25日(日)。入館は9時半~17時(金・土曜は19時まで)
休館日:月曜、7月19日、9月20日。ただし7月18日、9月19日は開館
会 場:神戸市立博物館(神戸市中央区京町、電話078・391・0035)
観覧料:一般1800(1600)円▽大学生900(700)円。高校生以下無料。カッコ内は前売り、20人以上の団体料金。前売り券は7月15日(金)まで販売。公式サイトのオンラインチケット、チケットぴあ、ローソンなど主要プレイガイド、コンビニなどで販売。
※日時指定予約優先制。予約なしでご来場されますと、入場をお待ちいただく場合があります。チケットの詳細や販売場所などは展覧会公式サイト=QRコード=をご確認ください。
主 催:毎日新聞社、神戸市立博物館、NHK神戸放送局、NHKエンタープライズ近畿
協 賛:信越化学工業、DNP大日本印刷、日本教育公務員弘済会兵庫支部
後 援:ブリティッシュ・カウンシル、Kiss FM KOBE
協 力:日本航空、ルフトハンザカーゴ AG
2022年7月15日 毎日新聞・大阪朝刊 掲載