3階展示室の様子。LAB活動でのリサーチ結果を見せる

 地球温暖化が進み、各地で自然災害が頻発するこの時代に、「地球とともに生きるための建築」を模索する建築ユニット「SUEP.」(スープ)の思想と試行を見せる。東京都港区のTOTOギャラリー・間で9月11日まで。

 末光弘和(1976年生まれ)と末光陽子(同74年)によるSUEP.は東京と福岡を拠点に国内外で活動する。自然と人の営みのバランスを建築を通してデザインする二人は、待ったなしの問題に軽やかに応答している。

 二人はスタッフらと「LAB活動」と呼ぶ研究会を定期的に開く。そこでのリサーチが建築へとつながるアイデアの種になる。3階展示室では「プレーリードッグの巣から学ぶ風の恵みを収穫する形」「太陽の軌跡から導く庇(ひさし)の形」「緑陰の恵みを収穫する樹木配列のかたち」など19のアイデアの種と、その種が結実して生まれた建築を模型で見せる。

 中庭には木陰の涼しさを体感させるパビリオン「Shading Dome」を設置。木の葉を重ねたようなひんやりとした素材は衛生陶器の廃材だ。4階では進行中のプロジェクトが並ぶ。川崎市の園芸センターのオフィスの模型は木のフレームが連続していた。そこに草木を絡ませ、日差しを夏は遮り、冬は取り込むという。ベトナムやタイといった高温多湿の国々の、開放的な建築のあり方を、日本にも適した形で提案している。別の集合住宅では鳥やチョウの飛行ルートを専門家と共に調査し、それらが飛んで来そうな樹木で緑化した。生物と共にある暮らしを探る。

 「地球と建築の関係を身近に捉えられる、子どもも楽しめる展示にした」(末光陽子)。手書きの文字やイラストによる解説、模型に隠れた小動物たちが建築の専門的で堅いイメージを和らげていた。

中庭のShading Domeの下に立つ末光陽子(左)と弘和

2022年7月13日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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