「Kyoto Interchange」第1弾の展覧会として開かれている金サジ、マユンキキ、山本麻紀子による展覧会

 アート作品の利益の一部を社会活動に寄付する。これだけなら珍しい取り組みではないかもしれない。しかし、寄付の割合や作家の取り分を完全に公開する例は少ない。さらに、配分を決めるのは作家本人。そんなユニークな展覧会が、京都市内で開かれている。

 京都を拠点にした新たなプロジェクト「Kyoto Interchange」(キョウトインターチェンジ)の第1弾企画。現代アート市場が過熱気味と言われる昨今だが、限られた予算で地道な制作を続けるアーティストは多い。プロジェクトのメンバーで、京都芸術センターで若手作家の支援に携わってきた山本麻友美さんは「同じように才能があって同じように作品を作っている人たちの間にあるギャップの大きさを、切実に感じていた」と問題意識を語る。価格で測れない作品の価値や、アートの公共性について考えを深めたいという。

 同じくメンバーの桜岡聡さんは画廊を経営する。京都の作家を全国的なマーケットに紹介するという役割を担う一方で、過剰な市場重視の傾向に危機感を抱いていたという。「商業画廊の機能はもちろん必要だが、別の価値観を同時に提示しなければという気持ちがずっとあった」と話す。

 そんな中、京都の老舗店「半兵衛麩(ふ)」から、新たな旗艦店で文化的な事業を行いたいと提案があり、年4回の同所での展覧会をベースにしたプロジェクトがスタートした。開催中の第1弾は3人の女性作家による展覧会=写真。在日コリアン3世の写真家・金サジは、20%を難民支援協会などに寄付する。草木や土を素材とした作品を出展する山本麻紀子は、動物園など2カ所の寄付先、「Kyoto―」と自身で、利益を4等分する方法を選んだ。「可視化自体が業界では異例で実験的。観客にとって作品や活動の理解の補助線になれば」と桜岡さん。京都市東山区の半兵衛麩五条ビルで、7月3日まで(075・600・2493)。入場無料。火・水曜休み。

2022年6月29日 毎日新聞・大阪夕刊 掲載

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