コピーライターや編集者としての仕事を見せる前半の展示

 アート、デザイン、ファッションと分野を横断し、活躍したクリエーティブディレクター、小池一子さん(86)。その仕事を総括する展覧会が開かれている。西武美術館(後のセゾン美術館)の企画や無印良品のプロデュースなど、経済成長と共に花開いた文化を耕した、その姿に迫った。

 1959年に早稲田大を卒業後、雑誌編集者からキャリアを開始し、コピーライター、翻訳家、キュレーターとして多岐にわたるプロジェクトを支えた。展示前半では小池さんがキャッチコピー「PARCO感覚。」を担い、故・石岡瑛子さんらと共に世に送り出したポスターなどが並ぶ。故・田中一光さん、三宅一生さんらトップクリエーターとの協業を通し、広告が力強いメッセージを放った時代の空気を伝える。

展覧会場に現れた小池一子さん=アーツ千代田3331提供

 後半は小池さんが83年に東京都江東区にビルを改装して開いた「佐賀町エキジビット・スペース」に焦点を当てる。当時、美術館は若手アーティストに閉鎖的で、ギャラリーも評価の定まった作家のみを扱っていたという。その状況に対して提示した「オルタナティブ」だった。無人の劇場を写した杉本博司さんの連作や、セザンヌの静物画を元にした森村泰昌さんの立体作品など、当時のスペースを彩った作品が並ぶ。ここでの展示を機に国際展に招かれるようになった作家も少なくない。2000年の閉廊まで「現代美術家のふ化器」と称されていたのもうなずける内容だ。

 小池さんは「美術史もモードも独学。自分の目を頼るしかなく、その連続だった」と振り返る。本展を「ごった煮」と謙遜したが、商業ベースの広告と最先端の美術を軽やかに行き来したその姿は、時代背景は違えど見る人を鼓舞するに違いない。東京都千代田区のアーツ千代田3331で3月21日まで。

2022年2月16日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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