尾長良範さんの日本画の魅力を語る金山謡さん

 高校2年の春から、富山県水墨美術館(富山市五福)に通い続け、2021年4月に同館学芸員となった金山謡(よう)さん(23)が初めて担当した企画展「尾長良範 筆あとから」が開催されている。新型コロナが再拡大する中での開幕に感無量の金山さん。「コロナと雪で暗くなりがちな中、明るい日本画の世界を楽しんで」と魅力をアピールする。

 金山さんは入善町出身。小学生の時に地元の美術館で現代美術の展覧会を見たが「全然分からん」と理解できず、それ以来美術館からは遠ざかっていた。しかし高校2年だった15年春、水墨美術館で開催された「源氏物語絵巻展」を見たいと思い立った。けんらん豪華な平安絵巻の世界を目の当たりにし、「私にも分かった」とその美しさに魅了された。

 それ以後、同館で開催される企画展はすべて鑑賞。雪舟展では当時の館長によるギャラリートークを聞き、その分かりやすさに感動。学芸員を目指し、富山大芸術文化学部に進学した。博物館学などを学び、資格取得に必要な博物館実習も同館を選んだ。

 日本画の中でも特に美人画が好き。「西洋画にはない慎ましさと、顔料の持つきらめきが魅力」と語り、大学卒業後は大学院に進学予定だった。しかしちょうど1年前、同館の学芸員募集があり、すぐに応募。たった1人の採用枠に見事合格した。

 初めての担当企画展は、氷見市出身で武蔵野美大主任教授の日本画家、尾長さんの展覧会。先輩学芸員に展覧会企画のノウハウを一から教わり、作品借り受けのため県外美術館に出向いて、展示構成などを考え、約9カ月かけてようやく開幕にこぎ着けた。

 しかし、開幕直前に新型コロナウイルスが県内でも再拡大し始めた。昨夏の外出自粛時期には一時休館も経験しただけに、「テープカットの時の感慨は半端なかった。本当に開幕できて良かった」と感無量だったという。

 会場では、尾長さんの初期から新作まで計約20点を一堂に展示。従来の硬いイメージの日本画ではなく、現代的なモチーフと明るい色彩が特徴だ。21年7月に、尾長さんを講師に開催した子供たちの水墨画ワークショップの作品などもあり、年代を問わず楽しめる。

 今回は、「どうしたら、お客さんに食いついて見てもらえるか」を第一に考え、同館が所蔵する尾長さんの父で漆工芸作家の保さん(89)=氷見市=の作品も常設展示室に展示するなど心憎い演出も見せた。次回は1年後の展覧会を担当予定だが、いずれは専門の近代日本画の展覧会を開くのが目標。「(昨年開催された)篁牛人展のように埋もれた作家を発掘して、ヒットさせたい」と1年目の若き学芸員は瞳を輝かせる。

 尾長展は3月6日まで。2月13日、3月5日午後2時から作品解説会も予定され、金山さんが解説デビューする見込み。「先輩方のように上手にできるかわからないが、楽しんでいただけるように尽力します」と意気込む。入館料は一般500円、大学生250円。月曜休館。

2022年2月9日 毎日新聞・富山版 掲載

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