1950~60年代のデザイン運動を担った個性豊かな面々の、息づかいが聞こえるような展覧会が川崎市岡本太郎美術館で開かれている。洗練された「よいデザイン」を目指す「グッドデザイン運動」と、「芸術は、爆発だ!」と叫び、美しく心地よいものを良しとする価値基準を転覆しようと試みた岡本との、意外性ある関わり合いも掘り下げた。
運動をけん引した「国際デザインコミッティー」は53年、イタリアから届いた「第10回ミラノ・トリエンナーレ」への参加要請に応えようと結成された。丹下健三、柳宗理、亀倉雄策、瀧口修造ら時代をリードする建築家やデザイナー、批評家らが集まり、顧問に坂倉準三、前川国男、シャルロット・ペリアンが名を連ねた。岡本や写真家、石元泰博ら交流があった異分野の作家も参加した。
彼らの作品の他、当時の写真が空気を伝える。ビール瓶が並ぶ机を囲み、メンバーが丹下邸でくつろぐ様子からはコミッティーがサロンの役割を果たしていたことが分かる。グッドデザイン審査会で額を突き合わせ品々を吟味する岡本らの姿からは「国民の啓発」という重責を担わんとする意気込みも感じた。
「ひもの椅子」や「坐ることを拒否する椅子」など、岡本らしさあふれる家具が他メンバーの影響を大きく受けたものであることも分かる。企画を担当した佐藤玲子学芸員は「画家だった岡本はコミッティーに参加していたからこそメーカーや産地とつながることができた」と指摘。とはいえ、岡本は60年代前半には実質的な活動から離れたという。「俺はバッドデザイン主義だ」という憎まれ口も紹介されていた。常設展と合わせて見ると、より迫ってくる一言だ。16日まで。
2022年1月5日 毎日新聞・東京夕刊 掲載