【美とあそぶ】松村邦洋さん/5止 完成した瞬間のうれしさ

文:寺田剛(聞き手、毎日新聞記者)

インタビュー

王貞治さん

 母校の九州産業大学で2008年に個展を開催する前のことです。現在福岡ソフトバンクホークスの球団会長を務める王貞治さんを描きたいと思い、ご本人の許可を得るため、私が過去に描いた野球選手の作品を送りました。すると「本当に絵が好きで、阪神が好きなんだね、松村くんは。どうぞ、自由に描いてください」と言っていただきました。野球選手に憧れていた僕は、選手のみなさんに神様のような尊敬の念を抱いていますが、なかでも王さんは特別です。

 日本テレビ系の人気番組だった「進め!電波少年」の出演中に絵を描き始めました。出演を終えて落ち着かなかった時期は、選手たちの絵を一生懸命描く場があって、本当に良かったと思います。

 作品は400枚以上。描き終えて1枚の作品になった瞬間は、とてもうれしいですよね。一生懸命やったものしか後には残らない。絵画はそう僕に教えてくれました。

PROFILE:

松村邦洋(まつむら・くにひろ)さん

1967年、山口県生まれ。大学生の頃、アルバイト先のテレビ局で片岡鶴太郎氏に認められて芸能界入りし、ビートたけし氏らのものまねで有名に。野球・歴史の知識が豊富で「ボクの神様~心に残るトラ戦士」など関連著書も多数。

2023年3月27日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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