「アフリカのB面」

【美とあそぶ】野口健さん/4止物事の両面を伝えたい

文:岸達也(聞き手、毎日新聞記者)

インタビュー

 父が外交官で国内外を転々としながら育ちました。「物事には必ずA面とB面がある。両方見ようと努めなさい」が父の口癖でした。A面は何もしなくても見えてくる世界。B面は見ようとしないと見えてこない世界。往々にしてB面にこそ重要なテーマがあると。

 きらびやかな観光地に足を運んだ後には、スラム街に一緒に入り込んで、厳しい貧困の現実も見せてくれる、そんな父でした。

 ケニアのナイロビ郊外にあるごみ捨て場で、その日の糧を得るために、女性や子供たちがガラスやアルミ、鉄といった資源を探している様子を撮影したものです。

 私は、アフリカでキリマンジャロやケニア山に登りました。山も、登って見える雄大な景色も美しかった。登山家の私にとってはA面の景色でした。B面のごみ捨て場の景色には解決すべき課題が詰まっています。写真の力を借りて、さまざまな問題の発信も続けていきます。

野口健さん

PROFILE:

野口健(のぐち・けん)さん

1973年、米ボストン生まれ。亜細亜大卒。99年5月、25歳でエベレスト登頂に成功し、7大陸最高峰登頂の世界最年少記録(当時)を樹立。その後の活動は清掃登山や戦没者の遺骨収集など多岐にわたる。

2021年12月27日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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