「『モノを大切に』伝えるバトン」

【美とあそぶ】野口健さん/3感謝託したランドセル

文:岸達也(聞き手、毎日新聞記者)

インタビュー

 日本の子供に6年間使い終えたランドセルを無償提供してもらい、きれいにしてからネパール・ヒマラヤの村々の子供たちに届けるプロジェクトを2018年から続けています。登山を支えてくれる、ポーターやその家族に感謝の気持ちを少しでも伝えたくて。

 日本のランドセルは軽くて丈夫。現地の子供たちはずた袋のようなものに教材を入れて、両手でつかんで肩に背負い上げて移動するのが一般的。ランドセルだと両手が空いているので、転倒しても軽いけがで済み、安全なんです。

 このプロジェクトで何よりうれしかったのは、日本のモノを大切に使う文化をネパールの子供たちに伝えられた点。プレゼントすると「本当に6年も使ったの?」と多くの子供たちが目を丸くし、そして、贈ったランドセルを大切に使ってくれます。寒そうな写真かもしれません。でもエピソードと合わせたら、何かぬくもりを感じませんか。

野口健さん

PROFILE:

野口健(のぐち・けん)さん

1973年、米ボストン生まれ。亜細亜大卒。99年5月、25歳でエベレスト登頂に成功し、7大陸最高峰登頂の世界最年少記録(当時)を樹立。その後の活動は清掃登山や戦没者の遺骨収集など多岐にわたる。

2021年12月20日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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