「仁王像」は先生の指導を受けずに初めて一人で制作しました。東大寺や善光寺の仁王像に刺激を受け、試行錯誤しながら表情をよりいかつくするなど独自性も加えました。自信になりました。
しかし、彫刻も歌もゴールがありません。彫刻では二科展で入選した「木彫楠公像」で反省点が見えてきましたし、15年前の「千の風になって」のCDを聴くと恥ずかしいくらい表現が稚拙です。
これまで歌の練習は理想になかなか追いつけず、いつも苦しかった。苦しみながら上達していました。しかし彫刻は楽しく、気ままにやれるのに上達している。ならば歌も気楽に取り組めば、楽しく成長できるのではないかと思えるようになりました。自ら追い込まずに成長していきたいですね。
来年は個展を開きたい。制作中の竜の彫刻は完成間近です。埼玉県深谷市にある畠山重忠像をモチーフにした作品にも取り組んでいきます。
PROFILE:
秋川雅史(あきかわ・まさふみ)さん
1967年、愛媛県生まれ。テノール歌手。国立音大、同大学院を経てイタリアに留学後、2001年にデビュー。「千の風になって」(06年)の大ヒットから15年を記念して全国47都道府県ツアーを開催中。
2021年11月29日 毎日新聞・東京夕刊 掲載