「聖観音菩薩像」立像

【美とあそぶ】秋川雅史さん/2ドイツ土産がきっかけ

文:福田智沙(聞き手、毎日新聞記者)

インタビュー

 彫刻を始めたのは、11年前に仕事でドイツのオーバーアマガウという木彫刻で有名な町を訪れたのがきっかけです。そこで買ったタカの置物を眺めているうちに自分でも彫れそうだと思えたのです。

 最初は「東急ハンズ」で5本セットの彫刻刀と小さな板を買って自分流で彫っていましたが、分からないことが多く、先生に師事することにしました。1年目は彫刻の基礎を勉強し、2年目から制作に取りかかりました。初めての作品が「『聖観音菩薩(ぼさつ)像』立像」。先生の見本をまねて彫りましたが、顔は目の形や左右のバランスを取るのが難しく、台座は気が遠くなるような単純作業で、仕上がりが見えませんでした。先生は3カ月ほどで完成させるそうですが、私は1年8カ月かかりました。

 最も苦労した仏像制作でしたが、彫れば彫るほど奥の深さが分かり、今は大好きです。お寺からの依頼で3体の仏像を制作、奉納しています。

PROFILE:

秋川雅史(あきかわ・まさふみ)さん

1967年、愛媛県生まれ。テノール歌手。国立音大、同大学院を経てイタリアに留学後、2001年にデビュー。「千の風になって」(06年)の大ヒットから15年を記念して全国47都道府県ツアーを開催中。

2021年11月15日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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