蛸漁(たこりょう)

【美とあそぶ】光宗薫さん/1苦しい思い、絵が救った

文:川名壮志(聞き手、毎日新聞記者)

インタビュー

 20歳の頃に体調不良から芸能活動を休止して、実家の一室に引きこもる生活が1年ほどありました。部屋から出ない。テレビを見ない。携帯電話も解約して、とにかく人を感じたくなかった。一人きりになった時にボールペンを使って絵を描き始めたんです。どうしてだろう? そこだけに私の感情がぶつけられたんです。部屋で座りながら、一日中ずっと無心で描いていました。

 この作品には、3匹の鬼がいますけど、それぞれ摂食障害、過食、過食嘔吐(おうと)を表しています。それに翻弄(ほんろう)されているタコが当時の私です。苦しんでいたあの頃の私は、とにかく絵を描くことで、生き延びていたんだと思います。

 これは2018年の作品です。ずっと絵を続けて、何枚も何枚も描いて、少しずつ心の整理ができるようになったのかもしれません。あの頃の私をやっと客観視できるようになり、この作品を制作しました。

PROFILE:

光宗薫(みつむね・かおる)さん

1993年生まれ。大阪府出身。アーティスト・俳優。AKB48で活動後、俳優やモデルなど幅広く活躍。独学で絵を描き始め、個展を開催するなどアーティスト活動が話題に。2022年春も個展を開く予定。

2021年10月11日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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