四代田辺竹雲斎の「Connection-無限-」

 「伝統工芸」とは何だろう。他の工芸とどのような違いがあるのだろう。そう考えつつ、「深める・拡(ひろ)げる―拡張する伝統工芸展」を見た。

 監修した外舘和子多摩美術大教授によると、「伝統工芸」という言葉が見られるのは戦時下。1943年発足の「日本美術及工芸統制協会」の事務所に「伝統工芸委員会」が置かれたという。54年にいわゆる人間国宝制度が生まれ、「日本伝統工芸展」も始まり、概念が深まっていった。

 本展は、陶芸、漆芸、木竹など7部門の技術を取り上げ、初回から伝統工芸展の会場だった東京・日本橋三越本店で紹介するものだ。技の広がりや表現の可能性に焦点を当てたことが特徴で、作家は若手から人間国宝まで幅広く、伝統工芸展の枠外にあるような表現も見られる。

 まず目を引くのは、国内外で注目を集める竹工の四代田辺竹雲斎(73年生まれ)のインスタレーション。竹ひごをメビウスの輪のように編み上げ、閉会後は解体して再使用するという。その手法は多分に現代的であり、素材がなくては始まらない伝統工芸のあり方とも合致する。このほか暮らしの空間になじむ作品も展示され、表現の広さを最も感じさせるのが木竹だろう。

土屋順紀の紋紗(もんしゃ)着物(奥右)など軽やかな表現の作品も展示される

 金属の光沢を生かし、高いデザイン性で見せる金工も魅力的だ。異素材の金属を組み合わせる象嵌(ぞうがん)の手法を用いた花器でも、渡り鳥をモチーフにした中川衛(同47年)や、屋根瓦から着想した村上浩堂(同61年)まで幅広い。和田的(同78年)をはじめ近年目立つ白磁(陶芸)や、土屋順紀(同54年)らによる透け感のある捩(もじ)り織の着物(染織)など軽みのある表現が今の気分であることも、また分かる。

 外舘教授は言う。「技術と素材に対する理解をベースに、新しいものを積み重ね、高い技術が表現につながることを体現するのが伝統工芸です」。文化庁の主催。31日まで。

2022年1月26日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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