明時代・成化年間(1465~87年)、高さ6.9㌢、口径15.4㌢、底径5.5㌢

 つややかな白磁の碗(わん)に、淡い青色の花を描いている。外側に5弁の花をあしらった花唐草文を配し、内側の中央にキクの花を、側面にツバキやボタン、アサガオなど四季の花を組み合わせた花づくしのデザインだ。青一色の絵付けでありながら、軽やかな筆運びと濃淡によって、ツルが細く長くのびる様子と、花と葉のやわらかな質感を巧みに表している。

 本作は、底裏に記された「大明成化年製」という銘によって、明時代・成化年間に、宮廷向きに景徳鎮窯で焼かれたことが知られる。景徳鎮窯の主要な製品である青花磁器は、絵付けに用いるコバルト顔料の産地と調合方法が時代によって異なるため、さまざまな色合いを呈する。

 とりわけ成化年間の青花は、中国産のコバルトを使用し、淡い色が特徴。中国歴代の青花磁器において永楽~宣徳年間(1403~35年)の製品とともに高く評価されている。加えて、成化年間の代表的な器種であるこのような碗は、外側から内側の文様が透けて見えるほど薄作りで端正な形も見どころだ。欧米でパレスボウルと称されるもので、現存作品の多くは台湾の故宮博物院に所蔵されている。国内に存在するのは本作の他に数点とみられる。

 本作の内外に異なる種類の花唐草文をそなえている点は注目される。一本のツルに多様な花を連ねる内側の花唐草文は、めぐる季節の循環、すなわち永続を願うおめでたいモチーフだ。淡雅な文様と青色、洗練された形が調和した本作は、皇帝のうつわと呼ぶにふさわしい、永遠の美を宿している。

 ◆メモ
 ◇景徳鎮窯
 現代に続く中国・江西省の一大窯業地。元時代以降、白磁にコバルト顔料で絵付けした青花磁器を中心に生産し、有田焼やマイセンなど世界のやきものに大きな影響を与えた。

INFORMATION

岡田美術館(0460・87・3931)

本作は、常設展示している。31日、2023年1月1日、休館。神奈川県箱根町小涌谷493の1。

2022年12月19日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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