初代長次郎から当代まで、歴代の茶碗が並ぶ展示室

【ART】己の道を 歴代当主の熱京都・樂美術館、開館45周年展

文:山田夢留(毎日新聞記者)

日本美術

陶芸

 千利休の佗茶(わびちゃ)の思想を具現化する全く新しい茶碗(ちゃわん)を生み出した初代長次郎から、2019年に襲名した当代・十六代樂(らく)吉左衛門さんまで、樂家歴代の作品がずらりと並ぶ「開館45周年記念 定本 樂歴代」展が樂美術館(京都市上京区)で開かれている。一子相伝で初代の精神と製法を守りながら、歴代がそれぞれに切り開いてきた多彩な表現に触れることができる。

 樂家の全体像を紹介する初めての書籍として13年に出版された『定本 樂歴代』(樂直入(じきにゅう)・樂吉左衛門著、淡交社)の、改訂新版刊行に合わせた展覧会。同書掲載の作品の中から歴代当主のほか、ゆかりの深い本阿弥光悦らの名品を展示する。

『改訂新版定本 樂歴代』(淡交社)

 吉左衛門さんは最新作の黒樂茶碗を出品。黒の釉薬(ゆうやく)をかけ残して地肌を見せたり、高台を高めにしたりすることで、「これで一服飲みたいなと思ってもらえるような軽やかさが出したかった」。隣に並ぶのは、先代の樂直入さんによる「皪(れき)釉樂茶碗 梨花」。前衛的な焼貫(やきぬき)の茶碗で知られる直入さん初期の作品で、自身が編み出した白釉を使った愛らしい一品だ。「ゼロから1を作った長次郎の茶碗は、当時の最先端だった。続く二代三代が初代をまねずに同じ熱量で自分自身の作品を作ったことで、歴代の歩みが始まった」と吉左衛門さん。12月24日まで。

2023年9月25日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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