新宮さんの屋外作品の模型。奥には新宮さんとピアノさんの年表が並ぶ
新宮さんの屋外作品の模型。奥には新宮さんとピアノさんの年表が並ぶ

 風や水で動く彫刻で知られる新宮晋さんと、前衛的でありながら環境に溶け込む建築を手がけるレンゾ・ピアノさんは、ともに1937年生まれ。関西国際空港(関空)旅客ターミナルビル建設をきっかけに出会い、これまで10のプロジェクトでコラボレーションした2人の軌跡をたどる「Parallel Lives 平行人生―新宮晋+レンゾ・ピアノ展」が大阪中之島美術館(大阪市北区)で開かれている。

新宮晋さんの屋内作品「雲の日記」(中央上部)やレンゾ・ピアノさん設計「チバウ文化センター」の模型(左奥)が展示されて
新宮晋さんの屋内作品「雲の日記」(中央上部)やレンゾ・ピアノさん設計「チバウ文化センター」の模型(左奥)が展示されて

 大阪出身の新宮さんは東京芸術大絵画科を卒業後、イタリアに留学。平面から立体作品を経て、帰国後に風で動く彫刻を手がけるようになった。イタリア・ジェノバ出身のピアノさんは、仏ポンピドーセンターの設計などで知られる建築家。関空での仕事が決まった89年、「風のアーティスト」として注目されていた新宮さんに「空気の流れを見えるようにしてくれないか?」と作品制作を依頼した。ピアノさんが設計した国際線出発ロビーの流線型の屋根のもとに、新宮さんは青と黄色のモビール「はてしない空」を制作。意気投合した2人は、イタリア各地やニューヨークなどでのプロジェクトに携わってきた。

 本展ではコラボレーション作品とそれぞれのソロワークを、精巧に作られた模型や本展のために制作された映像などで紹介する。「平行人生」というタイトル通り2人の年表パネルが並べて掲示される最初の展示室では、新宮さんの屋外作品の動く模型や、ピアノさんの建築の模型102点が置かれた架空の島「アトランティス島」などを展示。新宮さんの屋内作品がゆったりと動く大きな展示室には、ピアノさんの代表作の模型が置かれ、背後の壁に写真や図面、スケッチを取り込んだオリジナルの映像が映し出されている。

 「風」や「軽さ」を共通のテーマに、2人は現在も新たなプロジェクトに挑んでいる。「34年間、人生の中で大事な部分をともに過ごした2人の軌跡のようなものを感じていただけたら」と新宮さん。86歳の誕生日に開幕した本展の開会式で、「非常に変わった企画だが見せ方としてはすごく工夫したので、展覧会そのものを楽しんでいただきたい」と語った。会期はピアノさんの86歳の誕生日、9月14日まで。

2023年8月21日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

シェアする