国立新美術館のガラスの壁に展示された鴻池朋子さんの「武蔵野皮トンビ」
国立新美術館のガラスの壁に展示された鴻池朋子さんの「武蔵野皮トンビ」

【ART】
街で夜明かし、アートの実験
六本木で先月 70プログラム

文:平林由梨(毎日新聞記者)

イベント

現代美術

 東京・六本木を舞台に街全体で現代アートや音楽、ダンスなどに触れられる「六本木アートナイト2023」が5月27日から28日にかけて開かれた。コロナ禍で2020、21年は中止し、昨年は開催時間を短縮したが、今年は4年ぶりに従来のオールナイトでの実施がかなった。

 「生活の中でアートを楽しむ新しいライフスタイル」を提案しようと09年に始まったこのイベント、六本木にある森美術館、国立新美術館、サントリー美術館といった美術館内外に作品を展示するだけでなく、六本木ヒルズや東京ミッドタウンといった商業施設や商店街の工事用仮囲いなども使いながら、約45組のアーティストが約70のプログラムを展開した。

 六本木ヒルズアリーナにはドイツ・カッセルで5年に1度開催される22年の「ドクメンタ15」に日本人で唯一招かれた栗林隆さんと、栗林さんと活動を共にする集団「Cinema Caravan」が巨大なタンカーをモチーフにしたインスタレーションなどを設置。開催に先立つ25日に行われたプレスビューで栗林さんは「ここから新しい時代の人と人とのつながりやコミュニケーションについて考えられるような実験場が作りたかった」と語った。

オランダの「Close−Act Theatre」によるパフォーマンス
オランダの「Close−Act Theatre」によるパフォーマンス

 また、オランダから来日したパフォーマンスカンパニー「Close−Act Theatre」は同地などで2日間にわたって計6回、パフォーマンスを上演。両足に棒状の器具を付けたパフォーマーが見る人の頭上をゆっくりと行き来しながら白い翼をはためかせ、非日常にいざなった。

 国立新美術館には鴻池朋子さんの作品計5点が登場。前庭の「狼ベンチ」には多くの人たちが実際に座って記念撮影していた。また、エントランスホールの湾曲するガラス壁には幅約24㍍、高さ約10㍍の「武蔵野皮トンビ」が掲げられた。廃棄される皮をつぎはぎした巨大なトンビが吹き抜けの大空間から鑑賞者を見下ろす様は圧巻だった。

2023年6月5日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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