布によるインスタレーションと絵画が展示された会場

【ART】
色と形で絵画探究、今井俊介さん
そよぐ変奏のストライプ

文:平林由梨(毎日新聞記者)

インスタレーション

現代美術

 ストライプや水玉を明るい色彩で描く今井俊介さん(1978年生まれ)の美術館では初となる個展「今井俊介 スカートと風景」が東京・初台の東京オペラシティ アートギャラリーで開かれている。香川県丸亀市の市猪熊弦一郎現代美術館からの巡回展。

 「何を描いたらよいのか」と模索していた2011年、知人がはいていた、動くたびに揺れるスカートに目を奪われた。「これを描けばいい」と直感したという。ドレープの立体感やうねりを絵画で分かりやすく表せる模様がストライプだった。それから10年以上、スカートをきっかけに見いだした風景を絵画シリーズ「untitled」で追究している。

作品の前に立つ今井俊介さん

 布を支柱にかぶせたインスタレーションと、その作品の一部を描いた絵画との関係性は、今井さんの立体と平面をめぐる思考の一端を伝える。目に鮮やかな色彩の組み合わせは、衣服が積み上がるファストファッション店の光景が原点にある。展示室は異例の調光によって晴れた屋外のように明るい。

 絵画のイメージは、主にパソコン上で模様や図形を組み合わせたグラフィックからスタートする。それを紙に出力し、ゆがめた状態で撮影。トリミングしたその画像をアクリル絵の具でカンバスに描くという。

 一見すると抽象画だが、実際に見たものを描くという点では具象画でもある。立体と平面、抽象と具象、絵画とグラフィックデザイン、これらの境界を行き来しながら「絵画とは何か」、探究を続ける。

 今井さんは「10年もやっていると飽きてくることもある。でも、描いていると必ず、次の課題が見つかる。晩年に回顧展ができたら全てストライプの作品にしたい。時代ごとの変化が発見できると思う」と語る。

 同館のために制作した縦3・2㍍、横約8・4㍍の布による大作は、のれんのように人が通るたびにそよいでいた。一筋の探究心に伴う色と形の変奏は、空間を風のように吹き抜ける。6月18日まで。

2023年5月15日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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