昨年の開催風景。会場には、大型のインスタレーション作品も展示された=「Tokyo Gendai」提供

 国内外から現代アートの注目作家の作品が集まり展示・販売されるアートフェア「Tokyo Gendai」が7月5~7日、横浜市西区のパシフィコ横浜で開かれる。創設者の一人で、世界各地でフェアを運営している「ジ・アート・アセンブリー」のマグナス・レンフリューさんに、日本のアート市場の展望を聞いた。

 「Tokyo Gendai」は2023年に初めて開催され今年が2回目。昨年は73のギャラリーが出展し、34カ国から2万人を超える人が訪れた。今年もドイツや香港のトップギャラリーなどの初出展24軒を含む73のギャラリーが集まる。

 日本でのフェア開催を企画した理由について、レンフリューさんは「日本、特に東京には洗練された質の高いギャラリーがそろっています。また美術館のレベルも高く、アートのみならず、建築や音楽、自然など日本にはさまざまな文化的な魅力がある。フェアを開催するロケーションとして最高の場所」と話す。

 展覧会人気が示すように〝見る〟方ではアート好きな日本だが、〝買う〟方はまだまだ盛り上がってはいないようだ。世界最大級のアートフェア「アートバーゼル」とスイスに拠点を置く金融グループ「UBS」の調査によると、23年のアート市場の規模は推定約650億㌦(約10兆円)だが、うち日本の占める割合はたった1%。1位の米国(42%)や2位の中国(19%)、3位の英国(17%)と比べると、大きな差がある。

 レンフリューさんは「東京は世界の中でも有数の豊かな都市です。それに反するようなアート購入の数字を見れば、やはり大きくマーケットを拡大できるだろうという可能性を感じます」。実際、第1回の開催後には、次回はいつか、どんなプログラムがあるのかなど数多くの問い合わせが来たり、海外のギャラリーが日本の作家に連絡を取ったりするなどの動きも見られたという。

 「Tokyo Gendai」では〝買う〟人だけでなく、〝見る〟だけの一般来場者も楽しめるよう、ギャラリー展示に加えて、アジア人女性の作品を集めた特設展示や大型のインスタレーション作品の展示、アートをテーマにしたトークイベント、作家による子どもたちとのワークショップなども用意されている。

 レンフリューさんは「このアートフェアはひと握りの方のためのものではなく、誰でもウエルカムです。現代アートに対して、わからないという不安を持っている方も多いかと思いますが、その思いはいったん置いておいて、ぜひ足を運んで触れてほしい。わからないことはどんどんギャラリーの人や作家に質問してください。体験を通して学んで、いろいろなことを吸収する機会にしてほしい」と話している。

「Tokyo Gendai」創設者のマグナス・レンフリューさん=東京都渋谷区で、小松やしほ撮影

2024年6月3日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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