公開された「大催事場」の外観イメージ図=2025年日本国際博覧会協会提供

 「生きている喜びを建築でどのように表現できるか、一生懸命考えました」。2025年大阪・関西万博で開会式などの主要イベントを催す「大催事場」を設計した伊東豊雄さん(82)は11月下旬、東京都内で記者会見し、デザインに込めた思いを語った。大催事場は高さ約20㍍の円筒形。どっしりとした本体が金色に輝く大屋根を抱く。「モダニズム(近代主義)の建築というよりネパールあたりの宗教建築を想像しました」と伊東さんが語るように、全面ガラス張りで現代建築の先端性を示した「せんだいメディアテーク」(仙台市)や揺らめくような透明感がある「まつもと市民芸術館」(長野県松本市)、有機的な曲線が連なる「台中国家歌劇院」(台湾)など、これまで手がけた代表的な公共建築とはひと味違っている。

 会見に同席した藤本壮介・会場プロデューサーは「堂々とした劇場。『太陽の塔』をほうふつとさせる」と評価。当初、伊東さんには太陽の塔のように内部を深紅一色にする構想もあった。プロジェクションマッピングに対応するため白色が基調となったが、「真っ白な劇場というのは既存のものの中にはないと思います」と胸を張る。

「大催事場」内部空間のイメージ図。椅子も床も白で統一する=2025年日本国際博覧会協会提供

 延べ床面積約8400平方㍍で約2000人を収容する。建設費の上振れを防ぐため屋上を来館者に開放するプランは断念したが、「それ以外は当初考えていたように進んでいます」。

 1970年大阪万博を20代後半で経験した伊東さん。その時は、当時の建築家らが描いた「科学技術の進化こそが明るい未来を実現する」というビジョンに落胆したと振り返る。それから半世紀。再び国内で開催される万博で伊東さんはシンプルで原初的とも言える建築を構想している。「強い建築をつくりたい、建築が本来もつべき力を見せたいという気持ちがすごくあります」と思いをふりしぼる。

 訪れる人に生きる喜びを体感させ、万博のシンボルと呼ばれるような建築となるか、注目したい。

2023年12月11日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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