「金彩菊花文花器一対」1880年ごろ、フランス、バカラ、井村美術館所蔵
「金彩菊花文花器一対」1880年ごろ、フランス、バカラ、井村美術館所蔵

 ◇日本美術から強い影響
 1867年パリ万博、続く73年ウィーン万博で日本美術がヨーロッパに紹介されると、それまでの西洋美術には見られなかった大胆な構図、草花や虫などに主眼を当てた作品の数々が欧州の人々や美術界に大きな反響をもたらすこととなった。

 万博から影響を受けた西洋の作家たちは、続々と日本の絵画や工芸からインスピレーションを受けた作品を制作し、19世紀末にかけて「ジャポニズム」と呼ばれる日本文化の流行を生み出した。すでにフランスを代表するガラス会社であったバカラにおいても、先のパリ万博で日本美術に触れて以来、日本の装飾や題材の研究を重ね、1878年のパリ万博に多数の日本風ガラス作品を出品し、3度目の大賞を獲得した。

 この一対の花器は、バカラが開発した着色クリスタルガラスを使い、日本の漆器と白磁器を表現した作品である。彫刻と金彩で表現された繊細な菊花文に日本美術からの強い影響が感じられる。ヨーロッパで受け継がれてきたガラス技法を基に、時代の流行や人々の需要をとらえて世界的ブランドに発展した多彩なバカラを物語る作品の一つと言えるだろう。

INFORMATION

特別企画展「ヴェネチア、プラハ、パリ 三都ガラス物語~歴史を駆け抜けた華麗なるガラスの世界~」

<会期>2024年1月8日(月)まで。午前10時~午後5時半(入館は同5時まで)。会期中無休
<会場>箱根ガラスの森美術館(神奈川県箱根町仙石原 電話0460・86・3111 https://www.hakone-garasunomori.jp
<入館料>大人1800円、高校・大学生1300円、小・中学生600円
主催:箱根ガラスの森美術館、毎日新聞社
後援:箱根町
協力:箱根DMO(一般財団法人箱根町観光協会)、小田急グループ
特別協力:町田市立博物館、井村美術館、高砂香料工業株式会社
監修:由水常雄(美術史家)

2023年10月30日 毎日新聞・神奈川版 掲載

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