「グラビール装飾グラスセットVALLÉE」1902年ごろ、フランス、バカラ、井村美術館所蔵
「グラビール装飾グラスセットVALLÉE」1902年ごろ、フランス、バカラ、井村美術館所蔵

 ◇鉛クリスタルの最高峰

 器の表面に古典的な円柱と優美なアーチ、中心には花や果実が入った籠や所有者のイニシャルがグラビール彫刻されている。フランスロレーヌ地方のバカラ村で作られたグラスセットで、バカラが誇るクリスタルガラスの清澄な美しさがひと際目を引く作品である。

 ベネチアで生まれた無色透明ガラスは、その後ヨーロッパ各国の技術研究の礎となり、ボヘミアやイギリスが独自の技術を確立、クリスタルガラスの品質は向上していった。そしてバカラでは鉛の含有量を増やし、まさに水晶のような鉛クリスタルガラスの最高峰を作り上げた。

 このグラスセットは1脚だけ赤色になっている。色付きのグラスを加えるとテーブルに並べた際に差し色となり、華やかな食卓を演出した。バカラで製造されるグラスは、きらびやかさと重厚感を兼ね備え、19世紀、パリの社交界のみならず、世界中の王室や富裕層から愛される一流のテーブルウェアとなった。

INFORMATION

特別企画展「ヴェネチア、プラハ、パリ 三都ガラス物語~歴史を駆け抜けた華麗なるガラスの世界~」

<会期>2024年1月8日(月)まで。午前10時~午後5時半(入館は同5時まで)。会期中無休
<会場>箱根ガラスの森美術館(神奈川県箱根町仙石原 電話0460・86・3111 https://www.hakone-garasunomori.jp
<入館料>大人1800円、高校・大学生1300円、小・中学生600円
主催:箱根ガラスの森美術館、毎日新聞社
後援:箱根町
協力:箱根DMO(一般財団法人箱根町観光協会)、小田急グループ
特別協力:町田市立博物館、井村美術館、高砂香料工業株式会社
監修:由水常雄(美術史家)

2023年10月29日 毎日新聞・神奈川版 掲載

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